ホビット〜、または行きて帰りし物語

ここにあるのは、遠い昔の物語である。当時の言語や文字は、今日のそれとは 著しく異なっていた。その言語らを表すに、英語が使われている。しかし、次の二点に注意したい。 (1) 英語では、"dwarf" の正しい複数形は "dwarfs" しかなく、形容詞は "dwarfish" である。 物語では "dwarves" と "dwarvish" が使われているが、それはもっぱらソーリン・オーケンシールド やその朋輩たちをふくむ古〔いにしえ〕の人びとをさすばあいにかぎられる。 (2) "Orc" は、英語の単語ではない。一、二箇所の〔文献〕にはみつかるが、 大抵は "goblin" (または大型のものは"hobgoblin" )と訳されている。 "Orc" の名称は、当時ホビット族たちがかれら生き物たちをそう呼んでいたのであり、 私たちがイルカ類の海棲動物[シャチ]に充てて呼ぶ"orc", "ork" とは無関連で

ある。

    ルーンとは、本来、木材、石、金属などに刻んだり、 引っかいたりして書くための古い文字形であり、したがって線が細く、 角ばっていた。この物語の年代では、ドワーフ族のみが日常的に使用しており、 とりわけプライベートや極秘の記録にもちいられた。当作品においては、ドワーフのルーンを表記するのに、 (ちかごろ[20世紀]では知る人ぞ少なくなった)英語[アングロサクソン語]のルーンで代用表記している。
[右の]スロールの地図のルーン文字と、それを現代英語で書き写したもの( 2963 ページ)とを見て比べれば、現代英語風にアレンジした[ここでのルーン文字]アルファベットを解明できるし、 ルーン文字で銘打ってあるページ冒頭のタイトルも読めるようになる。 当地図の説明書きには、一般的なルーン文字セットの文字が全種類 (ただし X にあたるx runeをのぞいてだが)使用されている。 J V のかわりには、 I U [のルーン]が使用。 Q のルーンは無く(CWで代用); Z もまたしかり (必要とあらばドワーフの ルーンである z rune を使用)。 ただ、単一のルーンで二文字を表すタイプもあることも、お判りになろう: th ng ee 等である。 この種のルーンは他にも幾つか(ea rune east rune st ) 使われた例がある。 秘密の戸口(ドア)[のありか]が、「 D」 d rune の印で記されて
いる。横に書かれた手がそれを指差しており、その下には、
Five feet high the door and three may walk abreast: Th.Th.
と書かれている。 最後の二つのルーン文字は、スロールとスレインの頭文字である。エルロンドが読みくだしたムーンルーンは: Stand by the grey stone when the thrush knocks and the setting sun with the last light of Durin's day will shine upon the keyhole
 
    地図上には、コンパスの方角もルーン文字で記してあるが、ドワーフの地図の慣例どおり、 東が上になっている。よって、時計回りの方向に読んで、 E (東)、 S (南)、
W (西)、 N (北)、となる。

その理由は、『指輪物語』 III、 415 頁で明かされる。


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* 上のテキストとマップは、The Hobbit の50周年記念愛蔵版から取った。ルーン文字の文は、解読すると 「five feet high the door and three may walk abreast」 〔高さ五フィート也その戸、肩並べ三人が通れり〕と、 "Stand by the grey stone when the thrush knocks and the setting sun with the last light of Durin's day will shine upon the keyhole" 〔灰色の石の傍らに佇むべし、ツグミ鳥がたたき、斜陽がドゥリンの日の最後の光を鍵穴に照らすとき〕は、『ホビット物語』第3章の終わりにある。訳文は、瀬田訳等を引用するのがわずらわしい管理者おのずの手による。 このマップは、 息子クリストファー・トールキンが写本生となって、J・R・R・トールキンののこしたデッサンをもとに描画したものらしい。
推奨リンク:
The Tolkien Archives には、このマップを含む多数のマップ画像が収蔵される。 (ただしこのスロールの地図のスキャンが粗悪。)

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