『シドレクスサガ』、第1部の要約

このページでは、『シドレクスサガ』第1-79章の徹底的な要約(サマリー)をおこないます。

  1. ザムゾンとヒルデスヴィント
  2. ディートリッヒとヒルデブラント
  3. ハイメ
  4. オゼリッヒ〔オーサントリックス〕とオダ
  5. エッツェルとヘルヒェ〔アッティラとエルカ〕
  6. 鍛冶師ヴィーラント

この要約のみにおいて、このサガを学術的に分析しようとする試みについては、いっさいの 責任を負いかねます。

参照の便宜上、このサガをいくつかの部に分割してあります。これは、一部をのぞき、ほぼ Von der Hagen の分割方式にしたがいました。 さらには《Membrame 写本》の章番号が附記されてあります。

このサガの一貫性(矛盾性)の議論については、 Boer (第2のhref) をご覧ください。


1: ザムゾンとヒルデスヴィント (Th. 1-13)

《Membrame 写本》からは最初の数ページが散逸しているため、サガの冒頭部はA写本、B写本から取られています

ィートリッヒDietrich[独], Thidrek/Þiðrek[北]の祖父ザムゾン〔サムソン[北欧]〕Samson[独, 北]の遍歴。ザムゾンは、サレルニ≒サレルノ? Salerni[独, 北]ロットゲール伯Rodger[独], Rodgeir[北]に従う一介の騎士の身でありながら、主君の娘ヒルデスヴィント〔ヒルデスヴィント[北欧]〕Hildeswind[独], Hildisvid[北]を奪い去って逐電する。やがてみずからサレルニの王となり、さらにベルンBern[独, 北]など数々の都市を征服し、バビロニアBabylonia[独, 北]エルズンク伯Elsung[独, 北]を討ちとる。 ザムゾンの息子ディートマルDietmar[独], Thetmar/Þetmar[北]は、ベルン伯の娘オディリアOdilia[独], Odila[北]と結婚。 ザムゾンは、三人の息子を残して、この世を去る。 領土はこの三人のあいだで、このような内訳で分割される:

エルマンリッヒ を追う
アケ を追う
エルズンク の殺害の結果
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2: ディートリッヒの初陣 (Th. 14-17)

こで、ディートマルの息子ディートリッヒDietrich[独], Thidrek/Þiðrek[北](主人公)のお披露目となる。 ヒルデブラントHildebrand[独],Hildebrand[北]は、フェニディ伯≒ヴェネチア. Venice[英],Venedig[独], Fenidi[北] レギンバルトReginbald[独], Reginballdr[北]
を父に持つ勇士で、 ディートマル王の宮廷にて、若君ディートリッヒの師傅(指南役)をつとめている。 ディートリッヒ十二歳のとき、ヒルデブラントに伴させて出で立つが、そこで アルベリッヒAlberich[独],Alfrek[北]という小人ドワーフをまんまと捕らえ、身代金がわりとして、 グリムとヒルトGrim & Hild[独], Grímr & Hildr[北]という兇悪の悪名たかい巨人の夫婦を退治する手助けをしろと要求する。 巨人らを倒したディートリッヒは、その一振り目の名剣ナーゲルリンク*Nagelring[独],Naglhring[北] ヒルデグリム*Hildegrim[独],Hildigrim[北]なる剛堅な兜ををここで得る。

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3: ハイメ (Th.18-20)

こに、勇士
ハイメHeime[独], Heimir Studasson[北]がベルンをおとずれる。 もとは牧場主の家業の出身で、父シュトゥッダーStudder[独],  Studas[北] は、女王ブリュンヒルトに仕える馬の飼育係。実家の牧場というのも女王の首都ゼーガルトに程近い森にあった。もとの幼名は父と同じシュトゥッダー( *「馬の飼育者ブリーダー」の意)とつけられたのだが、騎士への出世を志す彼は、その名をあっさり捨ててしまう。そして、ハイメという名の大蛇を倒したのを機に、みずからハイメを名乗ることにしたのである。その容姿は、金髪で顎鬚が茶色く、四の肘を持ったとも言われている。彼は名馬リスペ*Rispe[独],  Rispa[北]を父から餞別にゆずりうけ、ブルートガンク*Blutgang[独],Blodgang[北]を佩刀し、勇者のきこえ高いディートリッヒのいるベルンにむかう。 ハイメはディートリッヒとの決闘に挑戦するが、敗北。さしものブルートガンクも、ディートリッヒが頭にかむった巨人の兜ヒルデグリム*Hildegrim[独],Hildigrim[北]を斬りつけると、もろくも叩き折れてしまったのである。

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4: オゼリッヒ〔オーサントリックス〕とオダ (Th. 21-38)

ここで二つの王家が登場する。

ルトニット王T世は、 ノルディアン王を降したのち、臣下として服従させる。やがてヘルトニット王T世は死に、 二人の王子が王国を分領する。ノルディアンとその息子たちはオゼリッヒ王に恭順をしめし、その家来となる。 ノルディアンが死ぬと、アスピリアンが[巨人族の]跡目を継いだ。

ゼリッヒ〔オーサントリックス〕
は、フン族の王メリアスMelias[独], Milias[北]の娘オダOda[独,北]との結婚を希望。 しかしメリアス王は憤慨して、求婚を拒絶。そこでオゼリッヒは、詭計をもちいることをたくらむ。

小ぜりあいの後、オゼリッヒは、ノルディアンの四人の息子を含む精鋭をしたがえて、メリアス王の領国に潜入する。オゼリッヒは、お忍びで行動する間、「フリドリッヒ」という変名を名乗ることにする。
メリアスの治める王都に着いたフリドリッヒを、メリアスは、はなっから疑ってかかるのだが、市民は門戸を開いてこれを受け入れてしまう。 そればかりか、この自称フリドリッヒは、自分がオゼリッヒによって民衆の風聞にもなるほどの過酷なあしらいをうけている、きゃつめには、いつかかならず一泡ふかせてやらずにはすまぬと、誓いを立てている、などという、でまかせを、長々と遊説してまわったのである。 そして、自分はただメリアス王に仕えることができればこれ以上は望まない、それがかなえば、あとはひたすら辛抱強く、機会が訪れるのを待とう、などと語るのであった。 しかしメリアス王は、そんな仕官の嘆願を、再三再四、拒絶する。

その間じゅう、巨人族の四人兄弟は、全面戦争が勃発するのを、今か今かと躍起になって待ちうけていた。 棍持ちのヴィドルフはというと、お決まりどおり重い鉄製の枷〔かせ〕に拘束されたまま待機させらている。 ヴィドルフが時期尚早に戦いをおっぱじめないように阻止するお守役であるアベントロットとエトゲルは、 ヴィドルフの枷の鎖を王都の城壁につなぎとめておいた。
しかし、ヴィドルフは、自分の主君が他王の前に膝を屈するのを見て愕然とし、枷から脱すると、嬉々として殺戮を始める。 メリアス王は、命からがら逃亡するが、王都はオゼリッヒの手の者により略奪のかぎりがつくされる。そしてオゼリッヒはオダを見つけ出し、金と銀の靴を与えて、その場で彼女と結婚する。

アベントロットとヴィドルフ を追う
エトゲル を追う
アスピリアン を追う
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5: エッツェルとヘルヒェ〔アッティラとエルカ〕(Th.39-56)

て、
フリースラントFriesland[独], Frisia[北]王オジットの第二王子エッツェル〔アッティラ〕Etzel[独],Attila[北]は、メリアス王の領国である フン国Hunnenland[独], Humland[北] を侵略、その制覇に着手する。 ことは着々と進み、メリアスの頓死もこれを助ける(ちなみに、これは自然死で死去という、本サガではめずらしい例である)。 エッツェルはフン国の王に君臨し、王都を ゾーストSoest[独], Susat/Susa[北]に定める。

その支配を磐石とするため、エッツェルは、オゼリッヒ王とオダ王妃の娘で、 メリアスの孫娘ヘルヒェ〔エルカ〕Helche/Helca/Herka[独], Erka[北]との婚姻を所望する。 例のごとく、オゼリッヒは憤然としてこれを拒絶し、戦争の火蓋が切られる。 これをエッツェルの家臣でベッヒェラーレン辺境伯Bechelaren[独], Bakalar[北]リュエデゲール〔ローズオールフ〕 Rüdiger[独], Rotholf/Róðólfr[北]が戦争をうまく終結にもちはこび、リュエデゲールは、ヘルヒェ王女を送迎する一行にくわわることを志願する。

リュエデゲールは、変装で正体をまぎらし、「ジークフリート〔シグルズ〕」という偽名をかたって、しばしの間オゼリッヒの宮廷ですごすが、じっくりとかけてヘルヒェ姫をことば巧みに説得し、ついにエッツェルとの結婚を承諾させる。 そして二人はオゼリッヒの宮廷から逃亡。 オゼリッヒに後を追われるが、すんでのところで援護隊が現れ、エッツェルはヘルヒェを妻とする。 オゼリッヒは、エッツェルに対し一族郎党をあげて諍〔いさか〕うべし、と決意するが、 さしあたっては、猫かぶりの態〔てい〕で平和を装っている。

エッツェル〔アッティラ〕 を追う
リュエデゲールを追う
オゼリッヒ を追う
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6: 鍛冶師ヴィーラント(Th.57-79)

ルディアンの異母兄弟
(すなわちヴィルキヌス王と人魚〔水の乙女〕とのあいだにもうけられた子) ヴァーデWade[独],Vade/Vaði[北]は、その息子 ヴィーラントWieland[独],Velint, Velent[北]を鍛冶師にしたいとつよく望む。はじめヴィーラントは、 フン国Hunnenland[独], Humland[北] 出身の刀匠 ミーメMime[独],Mimir[北] のもとで三年間、鍛冶職人の鍛錬を積む。しかし、ミーメの養子 ジークフリートSiegfried[独],Sîfrit[中高独],Sigurð[北] が乱暴者で、弟子たちに、なにかと暴力をふるうので、いったん故国の ゼーラント〔ショラン〕Zealand[英],Seeland[独], Sjoland[北] に連れ戻す。

そしてヴィーラントは バローファ〔カッラーヴァ〕Ballova[独], Kallava[北] の山岳に連れてゆかれ、こんどは小人達について鍛冶見習いの修行につく。小人達は、ヴィーラント の腕をいたく気に入り、翌年、わが子を引き取りにやってきたヴァーデにたいして、ヴィーラントを、もう一年だけ 修行に留めさせてくれるのであれば、すでに受け取った謝礼はすべて返上してもいい、ともちかける。 このとき、息子を引き取りにくる期日は、ちょうどかっきり一年後でなくてはならない、もしこれを違〔たが〕えればヴィーラントを殺してしまう、 という条件をとりつける。

ヴァーデは期日より三日前に戻ってくるが、地滑りにあって不慮の死をとげる。これを知ると、ヴィーラントは、 逃亡を決意。父親があらかじめ隠しておいた剣を取り出し、これで小人達を始末し、 鍛冶の道具類のいっさいがっさいや、小人たちの金銀財宝を着服し、 木で一種のカヌーをこしらえ、この小舟で、ヴェーザー川をくだり、 北海へむかう。 そして十八日間も海に漂白したすえ、打ちあげられた海岸が、ユトランド半島にある ニドゥンク王の治国 ティオート〔ショーズ〕Thiod[独], Thiod/Þjód[北] だった。 この来訪者を目撃していたのは、ニドゥンクの重臣 レギンRegin[独,北] である。このレギンによって、ヴィーラントは鍛冶道具一式を まんまと盗まれてしまうのだが、うっかりと気づかずじまいだったのである。

ヴィーラントはニドゥンクの宮廷に仕えることになる。ある日、ヴィーラントは、王の一番とびきりの ナイフをなくしてしまい、代わりを作製する。 ニドゥンクは、いつのまにかナイフの切れ味が良くなっていることに気づき、ヴィーラントを問いただす。 ヴィーラントは、ナイフを鍛えたのは、この私めでなく、王のお抱えの鍛冶師 アミリアスAmilias[独,北]にございまする、 などと言いつくろう。 しかし、ニドゥンク王には、それが、アミリアスごときにはとうていできない芸当であると見抜いている。 とどのつまりは、アミリアスが、ヴィーラントに技競べの挑戦状をたたきつけるという事態に発展する。 アミリアスは甲冑を、ヴィーラントは剣をそれぞれ作り、その甲冑を着こなしたアミリアスを、ヴィーラントが新しい自作の剣で切りつけ、果たして相手を殺せるかどうかで決着をつけようというのである。

剣を作る準備にとりかかると、ヴィーラントはいまさらのように、道具が紛失していることに気づく。 盗人は、あのレギンのやつにちがいない。しかし、ヴィーラントはその名前すら知らない。 そこで彼は彫刻でレギンの肖像をつくる。 まるで生きうつしのようなその像をひと目みて、ニドゥンク王はその正体を言い当てる。 こうしてヴィーラントは道具を取り戻す。

ヴィーラントは名剣 ミームンクMimung[独,北] と、別にもうひと振り、それには劣る一刀を鍛造しておく。 アミリアスとの対決の日、ヴィーラントはアミリアスを、きれい真っ二つに両断する。 ミームンクの、あまりにも鋭利で滑らかな切れ味に、アミリアスは斬られたことすらわからないほどだった。 ヴィーラントから、体をゆすれ、といわれてはじめて、アミリアスの体は、ばらばらに崩壊する。 ニドゥンクは、むろんのこと、そのミームンクを余に差し出せよと命ずるわけだが、ヴィーラントは二振り目の剣に すりかえて献上する。

ばらくしたのちに、戦争が起きる。敵地に到着するやいなや、ニドゥンクは、 必勝をもたらす魔道具 《勝利の石(ジーゲルシュタイン)》Sigerstein[独], Sigsteinn[北] を忘れてきたことに気づく。 そこで、城館までに馬を駆り、みごと夜明け前までに、石を持って来られる騎士がおれば、そやつにわが王女を褒美にとらし、 国の半分を与えよう、と約束をする。

ヴィーラントは、名馬 スケミンクSchemming[独],  Skemminga[北]にうち跨って 出奔し、勝利の石をもって帰参する。しかし、それをニドゥンクに渡す前に、別の騎士が、 その石(と王女)を横取りしようともくろむ。ヴィーラントはその騎士を誅殺するが、そのことはニドゥンクの 逆鱗に触れ、ヴィーラントはニドゥンクの配下を去る。

ヴィーラントはその後、変装した姿で舞い戻り、ニドゥンクの娘に媚薬を盛ろうとこころみるが、それは 彼女の魔法のナイフによって看破されてしまう。 そこでヴィーラントは見かけこそ似ているが、魔法性を持たないナイフを作り、彼女のものとすりかえる。 ところが王女は、ナイフの切れ味が増したことに気づき、作り主がヴィーラントだったに違いないと推察する。 こうしてヴィーラントが、あたりに潜んでいることが発覚してしまう。 ニドゥンクは、ヴィーラントを捕らえると、罰としての足の腱を切ってびっこにさせ、鍛冶場の仕事につかせる。

こうまでひどいしうちをうけては、さしものヴィーラントも、王に復讐せずにはおれない。 彼はまず王女を誘惑し、狡猾きわまる手管をつかってニドゥンクの二人の年端もゆかない息子らを殺害する。 そして、ヴィーランドの弟、弓の名手 エギルEgil[独], Eigill[北]が、ニドゥンクの宮廷に訪れる。 その間にも、ヴィーラントは、せっせと羽毛の上衣をこしらえあげ、試験飛行までも成功させて いたのである。 そして[ある日ついに]、ヴィーラントは、鮮血をたっぷりと注ぎ込んだ膀胱の袋を腕にくくりつけ、 [飛行服で]空に飛びたつ。 ニドゥンクはこれを見るや、エギルに射落とせと命じる。エギルは、矢をはなち、鮮血をつめた 膀胱の袋にみごと命中させる。こうして、ヴィーラントは、王をまんまと騙しおおして脱出を やりとげる。

ニドゥンクの死後、その息子 オトヴィンOtwin[独], Otvin[北] とヴィーラントは和解する。ヴィーラントはそして王女と 息子ヴィティッヒとの再会をはたす。

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