ノルナ=ゲストの伝説

英訳は
  • ハーバード・エクステンション校にバラードと小話が。
  • アイスランド語はhttp://www.snerpa.is/net/forn/nornages.htm
  • フェロー諸島のバラードのフェロー語と英訳は、Nornagest Rima (ここはフェロー郵便局と関連している綺麗なサイトですよ。) 日本語のものは、目を通していませんが、
  • 日本アイスランド学会公刊論集に菅原邦城 氏の試訳アイスランド古潭『ノルナ=ゲストの話』がでており、バックナンバーもお求めできるとか、
  • また、山室静の、おそらくフィクション化されている『ノルナゲスト記』が。山室静訳があり、自選著作集に収録。

    (ノルナゲストの小話の内容を説明)

     オラヴ・トリュグヴァッソン王(前のレスにも出た竜頭船《長蛇》の持主で、ノルウェーの国をキリスト教に改宗させた人。 あずみ椋 『獅子の如く』というのがその伝記漫画らしい。)のもとに、ある風来坊のような人が訪れます。 名はゲスト(=来客。文字通りゲスト)としか名乗りません。
     夜になり、王が寝つかれないでいると、ただよう妖精らしきものがやってきて、この来客のベッドのところで止まり、 「こんな異教徒を家に招いてしまって、王は困ったことになるぞ」を意味することを謎めいた言葉でつぶやきます。  王があくる日、そのことについて、「お前はデーンの方から参ったというが、キリストを信心しないものをのさばらせておくとは デーン王も困ったものじゃな」
     「いやいや、陛下、そもそも私がデーンの国にいたのは何百年も前、なにしろまだ国王がオットー帝により キリスト教に折伏される前のことですじゃ。。。」
     てなことになり、このゲストというじい様はいったい何年生きているんだ?ということになります。

     ときに赤のウールヴ(狼)という、オラヴ王の配下のひとりが、夏季の侵寇をおえて、略奪や贈答の品々をもって オラヴの王宮にもどってきました。その宝の中には七つの継目で溶接され、それぞれの節が異なる色彩をはなつ 宝の指輪がまじっていました。これは"溶接"を意味する Hnitu∂r[アイスランド]/Hnituth[英訳]という名で呼ばれ、 ともどもが、これ以上の黄金はかつて見たことない、と首をうなずかせました。
     しかしただひとり、ゲストだけはあまり感心したようすを見せません。そこで、他の男たちがいぶかって、どうだ、 もしお前がこれ以上の黄金を知っていると証明できるかどうか、金4マルク(1マルクは200gほどでしょうか)を 賭けようじゃないかと持ちかけます。
     審判は、王がすることになりましたが、ゲストが取り出したのは、シグルズの馬具から毀れた黄金のホ具(かこ) ―バックルを取り出して見せたのです。
     その後、ゲストは自分のライフストーリーを語って見せますが、その長生きの秘密も明かします。彼がうまれたとき、 三人の巫女(ノルン)がやってきました。最初の二人は幸先よい予言をしたのですが、末妹が「この赤ちゃんは、 ここにあるろうそくが燃え尽きる以上に永らえることはできまい」という邪なる予言をします。
     ところがまわりのものは、すかさずロウソクを消してしまってしまったので、ゲストはこの長年死ぬこともなく生きてきたというのです。

    (デーン人オジエとの比較)

     このストーリーによくにたからくりのある話が、シャルルマーニュ伝説に分類されるデーン人オジエのロマンスです。 オジエはやはり、生まれたときに仙女たちがさまざまな恵みをさずけますが、一番若いモルギュ(モルガン)だけが、 「この子は将来私の愛人にしてあげるわ、それが贈物よ」というなんとまあふしだらなギフトをしかも赤ん坊に送ります。  オジエが成人して、騎士としてのキャリアを全うした頃、モルギュが老いたオジエを回収しにきて、 若返らせ、自分の住む桃源郷アヴァロンで時をおくらせますが、あるとき忘却の冠がずりおちてしまい、 オジエはホームシックにかかり、自国にもどります。自国に帰ると浦島太郎ですから、自分の兄弟の孫だとかいう若者に、 「驚いた、なんとあなたはあの大昔のオジエ殿ではないか」ということをいわれます。このときのオジエも、ノルナゲストと同じく 「それが燃え尽きてしまうと自分の命も尽きる」というロウソクをもっていて、オジエはそれに火をともして息絶えてしまいます。

    ノルナゲストのバラード

    フェロー語のバラードでは、物語のはこびがいささか違います。オラヴ・トリュグヴァソンが、町の広場に牛を連れて行って、 そこでサクサク剣を振るって牛を屠殺します。どうだ見事な剣さばきだろう、とご自慢なところを、なんのなんの、 とノルナゲストが言い、自分はファヴニル殺しのシグルズの剣を知っているとうそぶきます。  ある日、シグルズは馬のグラニに飼い葉をいささか食わせすぎて、ぬかるみにはまってしまい、バックルがちぎれた。 それを拾って渡そうとしたが、シグルズはくれてやる、と仰せになったのでいただくことにした。 わしは、グラニの横っ腹や尻繋のほうをきれいに洗ってやった。そのときついでに、その尻尾の毛を一本くすねたが、 どうじゃ、この長さ、..みたいな話をゲストはします。

     くだんのバックルを入手したとき、グラニを洗ったり、毛を抜いたりする部分は小話にも共通しています。 小話では毛の長さは7エル、バラードでは1ファゾムと1フィート=7フィートとしています。 エルという長さは、もとは肘(エルボー)から中指の先までの長さくらいを意味したのですが、 時代や場所により変動が大きい単位です。