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SKRÍMSLA
「スクルィームスリの歌」



このバラードの題材は、あるおとぎ話です。ひとりの農夫が、 邪悪な巨人を打ち負かし、財産と黄金をせしめて手に入れます。 まず序盤では、自然風景、雰囲気、情景が描かれて、その後につづく冒険譚の背景となっています。


農夫は森の中に分け入り、リンゴやブナグリなどの木の実このみを 取りに出かけますが、嵐に巻きこまれてしまいます。 黒雲が空を覆い、日も沈みかけ、影も長くなってきました。 農夫は、不安になり、こんなとき無事に家にいたならぁ、と 思います。
突然、空が晴れ、雲がひいて、ひややかな光線のなかに、 農夫が目にしたのは、ひとりの巨人でした。その手には、将棋タルヴ 盤(サイコロを振って遊ぶ中世のゲームの盤)をかかえています。 盤は象牙製、さいころテルニンガルは純金でこしらえてありました。

巨人は、農夫に「どうだね、ともだちよ、そこに腰かけて、 これから一局、打とうじゃないか」と言いました。 しかし農夫は相手になりません。ゲーム遊びにしろ、他の道楽にしろ、常日頃 やりつけてないのですから。しかし巨人は、押しが強く、 いやおうなしに応じさせます。しかもそれは命をしたゲームで、 敗者は、首を斬られるという、むごい条件で戦われたのでした。

ところが、思いのほか、巨人は負けてしまいます。それは、 「農夫が《勝利の手套シグルスハンスカル》 をはめたからだ」とバラードに歌われています。(このような備品が、ちょうど 都合よく手元にあるなんてことも、おとぎ話ならでは、ままあることですけど)。
よって巨人は、死ななくてはならないのですが、命乞いをし、 そのかわり、農夫が願うのぞみどおりのものをかならずかなえてやる、と約束します。

そのあと、数カ節にわたって、バラードは、農夫が出した要求を 歌っています―では、トロール(怪物)よ、おまえはワインやあらゆる佳肴ごちそうを調達すること、純白の大理石の御殿をたてること、それは奥ゆき長く、幅広く、ヒノキ材と象牙をつかった ぜいたくな普請 でなくてはならず、床はかたいタイルで敷きつめられ、屋根は鉛ぶきで、羽根のベッドは、霊鳥フェニックスの羽でつめられ、壁は紫一色でおおいつくすこと、等々。


しかし、いちばん肝心だったのは、生命の泉という仕掛けでした。 それは、永遠に枯渇せず、あらゆる飲物がこんこんと湧きで、しかもこれがあるうちは、 御殿のなかにいる者は、誰ひとりやまいわずらうことがないのです。 「本人自身が、死にたいと願うまで、けっして誰も病人にならないようでなくてはだめだ。 そうでないならば、お前の首を犬っころのように斬り落としてしまうぞ」と農夫は言います。 巨人は命が惜しいので、農夫の条件すべてを呑むしかありませんでした。 そして農夫は、家路につきました。

農夫の奥さんは、これからは前とはうってかわって、きらびやかな未日々が待ち受けているのだ、いう農夫の話を、 おいそれとは鵜呑みにすることはできず、「あやかしの 力とかかわり合いになるなんて、あんた、危なっかしいんじゃないかねえ」などと言います。しかし、農夫は床につくと、すやすやと寝入り、 もう早々と金銀財宝の夢などを見たりしています。その間、巨人のほうは、国を東奔西走して 農夫に約束した品々を集めなければなりませんでした。あくる朝、みごとな御殿が、 小屋の戸の外に建っておりました。

しかし、農夫が無用心に外に踏み出て御殿をよく見ようと近づきますと、 待ち伏せていた巨人は、これぞ鬱憤をはらすチャンスがきたと思い、腕を大きくふりかぶって 農夫に殴りかかりました。すると、ほんの手の爪でかすっただけですのに、ふくらはぎの肉ははがされ、 骨まで達してしまいました。さらには、腹もむしられ、内臓はらわたが飛び出してしまいました。芝の上に横たわる農夫は、もう虫の息です。 他の者がやってきて、農夫を立たせ、御殿のなかにg引きずっていれました。 すると、御殿の門内に入ったとたん、生命の泉の力で、彼はたちまちに壮健となり、 まるで何事もなかったように、動きまわれたのです。


農夫の奥さんは、今では紫や深紅のお召し物でおしゃれができますし、 物も豊富な生活できます。ただいま赤ん坊を身ごもっている奥さんは、 それでも、一抹の心配をかかえていないではありません。巨人のやつは、機会さえあれば、 農夫を殺してしまおうと、手ぐすねひいて待っているにちがいないのですから。
ここでバラードは終わり、こうしめくくられています:「農夫は、外にいても中にいても、 人生をたのしく すごせるに足る、すべての物を手に入れました、私の舌も、もう疲れましたから、 そろそろこの余興もおしまいにいたします」

この中世のダンス用のバラードは、フェロー語のものしか伝わっていませんが、 大自然が劇的に描写されているところに特色があります。それは、特にリフレーンの箇所に みうけられます:「冬はすぎ、夏は来たり、大地はいとなごみ、 美しき木の実このみ[丘肌]」に実る」。

— 原文: Skrímsli(フェロー諸島郵便局).
デザイン/文・Anker Eli Petersen


 

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