ジャバウォッキー用語集


thumbprint of jabberwock and alice by Tenniel

  『アリス』の続編『鏡の国のアリス』の第一章にある有名なナンセンス詩『ジャバウォッキー』(の第 1 節)の意味を解き明かすを手がかりは、 二通りある。
  まず、ひとつめは、ルイス・キャロル自身が語るもので、−この作家が23歳のとき弟や妹たちのために、自画・自筆した "雑誌"『ミッシュ・マッシュ〔Misch-Masch*〕』 [* 英語の mish-mash 「ごたまぜ」と同一のドイツ語。] には、 次のように手写しで書かれた第 1 詩節:

Twas Bryllyg, and ye slythy toves did gyre and gymble in ye wabe: 
All mimsy were ye borogroves; and ye mome raths outgrabe.

が載り、それにつづいて、各ナンセンス語がつまびらかに説明されている。

いまひとつは、『鏡の国のアリス』第六章で、ハンプティー・ダンプティーがアリスに手ほどきする解釈だ。 以下、その両方を表に記した。

テニエル画―トーヴ、ボロゴーヴ、ラスが日時計のまわりに集う絵

  キャロルの解釈   ハンプティー・ダンプティーの解釈 備考
BRILLIG, BRYLLYG
ブリリッグ

(動詞 の BRYL 、 BROIL 「(肉を)あぶる、焼く」 に由来)
「夕食をあぶり焼きにする頃合の時刻、即ち、午後の終わり」。

午後四時ごろ。夕食のものをあぶり焼きして[仕度し]はじめる頃合。

オックスフォード英辞典では、 "BRYL" は見当たらず、"bruyle" ならば、 BROIL の変形つづりとされていた。
SLITHY, SLYTHY
スライディー

( SLIMY 「ぬめっている、ヌルヌルな」 と LITHE 「しなやか」の複合語)
すべやかスムーズせわしいアクティブ

…「しなやかでヌルヌルな」#という意味だ。 「しなやか」ってのは、「せかせかアクティブ」と同じだな。
だからほら、《両開きの旅行かばんポルトマントオ》みたいなんだな ― 二つの意味が一つの言葉に詰めこまれてるんだ。

"smooth and active"
# "lithe and slimy"
TOVE
トーヴ

穴熊アナグマ (ムジナ)の一種。スムーズで白い毛並み[でおおわれ]、 後脚は長く、雄鹿に似た短い角を生やす。主食はチーズ。

アナグマみたいな―トカゲみたいな― コルク栓抜きみたいなやつらだ… 日時計の下に巣食うのさ―それから、チーズをえさに生きてるんだ。

* "Toves"は "groves〔グローヴス〕" と韻が合うように発音する、とキャロルは『スナーク狩り』の序文で語っている。 — M・ガードナーの註釈13。
GYRE
ジャイヤー

【動詞】 ( GYAOUR または GIAOUR 「犬」 に由来)
犬のように引っ掻くこと。

ジャイロスコープみたいに、ぐるぐる廻ることだ。

オックスフォード英辞典によると "GIAOUR" は、トルコ人が非回教徒、とくに キリスト教徒をなじるのにもちいる言葉である。
GIMBLE, GYMBLE
ギンブル

(よって GIMBLET 「錐」)
「なにかに穴をあけること」

錐みたいに穴を開けることだ。

"gimlet" が一般なつづり。
WABE
ウェイブ

(動詞 SWAB 「(びしょびしょな場所を)拭きとる」 と SOAK 「びしょ濡れにさせる」より)
「丘の側部(横っ腹の部分)」。 (雨でさんざんびしょ濡れにされることから)。

アリス:「なら、‘ウェイブ’ってのは、周りの芝生の植え込み、ってことよね?」
 
ダンプティー:「もちろん、そうだとも。‘ウェイブ’って呼ばれるのは、ウァーとぜんブに 伸びて、ウァーとこうブに伸びて、―」
 
アリス:「そんで、ウァーと、どっち側のブブンにも、伸びてるからね。」

* 原文:
"It's called 'wabe,' you know because it goes a long way before it, and a long way behind it —" "And a long way beyond it on each side."

MIMSY
ミムジー

(転じて MIMSERABLE 、 MISERABLE 「惨め」 )
「悲しい/不幸/不機嫌なこと」

薄っぺらでみじめ

"unhappy"
"flimsy and miserable"
BOROGOVE
ボロゴーヴ

絶滅したオウム鳥の一種。翼はなく、嘴は上向いており、 日時計の下に巣を作る。仔牛の肉を餌にして生きている。

痩せっぽちな、みすぼらしい鳥で、羽があっちこっちじゅうから突き出ている ―生きたモップみたいなもんだ。

*マーチン・ガードナーは『スナーク狩』序文を引いて、"borogoves"の最初の o が、 'borrow' の 'o' と同じように発音することを確定している。しかし、もっと気になるのは脚韻であり、はたして "borogove"が、第一行の"tove"トーヴ と完全韻を踏んでいるのか、あるいは目韻〔eye rhyme〕のみであって、 発音は "dove"「鳩」とライム(韻)するかが問題だ。
MOME
モーム

(よって SOLEMOME 、 SOLEMONE 「賢者王ソロモンをくずした語?」、 SOLEMN 「厳粛なる」等)
「厳粛/きまじめ/堅苦しいこと」

モームってのは、ちと自信が無いな。たぶん「 我が家よりてフロム・ホーム」を ちぢめた略ではないかな。つまりは迷子ということさ。

"grave"
RATH
ラス

陸亀りくがめの一種。頭部は屹立し、 口吻部はさめに似る。 前肢は凸状に彎曲し、膝這ひざんばいで歩く。 全体は滑らかで緑色。つばめ牡蠣かきを餌とする。

ラスは、まあいわば一種の緑ブタだな。

 
OUTGRABE
アウトグレーブ

【動詞】
OUTGRIBE の過去形。
(古い動詞 GRIKE 「?」や SHRIKE 「さえずる、金切り声を出す」に由来。 転じて 'shriek' 「金切り声を出す」 や 'creak' 「軋〔きし〕む」)
「キューキュー鳴いた」

アウトグライビングは、怒鳴るのと口笛鳴らすのとの中間で、 とちゅうでクシャミみたいな音が入るんだ。

オックスフォード英辞典は、SHRIKE は = SHRIEK で、 "(鳥が)ピーピーとさえずる"意味の旧語・方言であるとしている。GRIKE は見つからず。
"squeaked". ちなみに "squeak like a mouse" などとネズミの鳴き声を模すことが多い; ブタが(ブヒブヒ、ブヒッ)と甲高く鳴くのを模す句は"squeal like a pig" である。
[第 1 詩節]

23歳のキャロルは『Misch-Masch』で、ひきつづき第1節を次のように読み下している:

すなわち、この箇所を逐語的な英語に直すと:「それは夕刻だった、すべやかにして活発であるアナグマたちは、丘の側面(中腹)を引っ掻き、穴を穿っていた。オウムたちにしてみれば、とことん不愉快である。堅苦しい亀たちも、金切り声を上げていた」となる。 おそらくこの丘の頂には日時計がおかれていたのだろう。「ボロゴーヴ鳥たち」は、下に坑道を掘られて巣が陥没させられないか、気が気でなかった。丘はまた、「ラス亀たち」の巣だらけだったろう。外から「トーヴ穴熊」が引っ掻く爪音を聞いて、亀たちは恐怖で金切り声をあげながら飛び出てきたのだ..

* 原文: Hence the literal English of the passage is: 'It was evening, and the smooth active badgers were scratching and boring holes in the hill-side; all unhappy were the parrots; and the grave turtles squeaked out.' There were probably sundials on the top of the hill, and the 'borogoves' were afraid that their nests would be undermined. The hill was probably full of the nests of 'raths', which ran out, squeaking with fear, on hearing the 'toves' scratching outside. This is an obscure, but yet deeply-affecting, relic of ancient Poetry.
マルチン・ガードナーの註釈より [追加中] 備考
JABBERWOCK
ジャバウォック

キャロルは、ボストンの女子ラテン校から学校新聞をジャバウォックと名づけてよいかとの 打診の手紙の返事にこう書いている:「…アングロサクソン語の "wocer" または "wocor" は 「子孫」または「果実」を意味… [ですから] "jabber" を、一般に受け容れられている「熱気のこもった声高のディスカッション」ととれば、 そこから得られる意味は「熱気のこもったディスカッションの成果」です。…」

 

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